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グローバリゼーションリセット:なぜ今、グローバル戦略を見直す企業が増えているのか

10/15/2021
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※本記事は英語でもご覧頂けます:Globalisation Reset: Why Companies are Rethinking Global Strategy

グローバリゼーションとは、国際貿易、投資、移民などを通じて世界経済が統合されることであり、ここ数十年間にわたる世界の発展をよく表した言葉といえる。世界経済をはじめ、企業や消費者は、長年にわたりグローバリゼーションの恩恵を受けてきたと同時に、グローバリゼーションがもたらすリスクやマイナスの影響も受けてきた。

2008年の世界金融危機以降、相次ぐ新技術の開発・導入、世界の経済力のシフト、国民の関心の移り変わりなどにより、世界経済における貿易や投資の流れに減速や変化が見られるようになった。新型コロナウイルス(COVID-19)は世界の接続性がいかに脆弱であるかを浮き彫りにし、グローバリゼーションのリセットに拍車をかけるとともに、国や企業に対して貿易、投資、経営方針の再考を促した。企業や投資家がグローバリゼーションの次のステージに備え、それがもたらす機会や課題に対策をとるためには、世界情勢を変えている要因や、グローバリゼーションがどのように変化しているかを理解することが重要となる。

グローバリゼーションの流れを変えているものは何か

世界の貿易や投資の流れとは、企業がどこに投資したり、製造、購入、販売をどこで行うか、また、こうした活動を可能な限り生産的に行うために、どのような調整や仲介が行われるかを反映するものである。今日、こうしたビジネスにおける意思決定に影響を与える世界的な要因が強まっている。
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テクノロジー は、世界のイノベーションや生産性を高め、消費者とメーカーをつなぎ、迅速に情報を伝達するなど、新たな世界の接続性を可能にする重要なドライバーとなっている。デジタルプラットフォームとデジタルウォレットの台頭により、企業と消費者の間につながりが生まれ、世界及び地域市場の統合が進んだ。パンデミックによって、仕事、買い物、遊び、教育がオンライン化し、世界的なデジタルの流れが加速したといえる。ユーロモニターインターナショナルのデータによると、世界のEコマース市場全体に占める越境取引および海外からの売上の割合は、2011年は6.9%だったが、2020年には10.7%に増加した。さらに、自動化、人工知能、3D印刷など、製造業に新たなテクノロジーが出現したことで、企業にとっては、コスト削減や労働力への依存度の低下、生産性の向上につながる可能性がある。

 世界の経済力のシフトは、グローバルバリューチェーンの形成にも影響を与えている。中国をはじめとする新興国・発展途上国は、世界経済にとって、製造分野の中心であり続けるものの、これらの国々は、その消費量が増加する中、今や新たな主要消費市場としても注目されている。ここ数十年、新興国や発展途上国では貿易結合度の低下が著しく、各国の産業が成熟し、消費力が高まっていることを反映している。新興国・途上国市場が世界の消費者支出に占める割合は、2010年の31.4%から、2020年には37.6%に増加している。

GDPに占める国際貿易額の割合(2000-2022年)

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Source:Euromonitor International from national statistics/OECD/International Monetary Fund (IMF)
Note:Data for 2021 are forecasts.

中国をはじめとする新興市場の台頭とともに、最近では英国のBrexitや米中貿易戦争に現れたようなポピュリズムや保護貿易主義といった地政学的リスクが緊張をもたらし、世界貿易が後退する恐れも出てきている。また、一部の国では、関税障壁や非関税障壁が再び生じていることから、経済統合された地域における域内貿易やサプライチェーンの重要性が、グローバルバリューチェーンの中で高まりを見せている。 そしてCOVID-19のパンデミックがもたらした供給ショックを鑑み、メーカーは市場投入までのスピードや顧客との近接性を重視するようになった。

主要な輸出国の地域別輸出量(FOB) 2020年

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Source:Euromonitor International from World Trade Organisation

それらと同様に重要なのが、消費者の価値観や嗜好の変化である。グローバル企業は規格品を生産することが多かったものの、最近の消費者はよりカスタマイズされ、差別化された商品を好む傾向にある。また、パンデミックが発生する以前から、消費者は商品やサービスのサプライチェーンに透明性と社会的責任を求めるようになっており、国際的な貿易や多国籍企業の動向はより厳しい目で見られている。パンデミックにより、これらの目的や価値観がより重要視されるようになった。  

新たなグローバリゼーションがファッション業界に変化をもたらす

ファッション業界では、長年にわたって複雑かつ相互に関連しあう世界規模のサプライチェーンが構築されてきた。ただし、生産コストが比較的低いことと、有利な投資政策があることから、生産量の多くは中国、インド、ベトナムなどのアジア諸国に集中していた。しかし、パンデミックを機に断続的なロックダウンが講じられたことで、生産、輸送、消費に混乱が生じ、このアプローチ方法に生じた亀裂が浮き彫りとなった。そのため、ファッション関連のメーカーや小売企業は、製造や調達に関するこれまでの決定を見直すようになっている。一部の企業は、このようなリスクを最小限に抑えるために、部分的に現地や地域での生産にシフトし始めている。例えば、欧州のファストファッション企業であるC&Aは、繊維商品の生産拠点の一部をドイツに移し、メンヒェングラートバッハにジーンズを中心としたイノベーションハブ「Factory for Innovation in Textiles(FIT)」を開設して、アジリティの向上を図っている。これにより、サステナブルな商品の開発や、年間約80万本のジーンズを製造することを目指している。回復力を高めることは優先事項のひとつであるものの、アパレル業界は比較的労働集約的であるため、生産拠点の多様化は今後数年間にわたり、アパレル企業にとって課題となるだろう。

また、ファッション小売企業は、生産の自動化技術への投資を通したサプライチェーンの効率化とアジリティ向上に重きを置いている。ユーロモニターインターナショナルの「ボイス・オブ・ザ・インダストリー:COVID-19サーベイ」(2021年)によると、アパレルやパーソナルアクセサリー関連の小売企業の34%が、自動化ツールへの投資を増やすことを計画している。自動化ツールによって、ファッション小売企業はEコマースの注文をより短時間で処理することができ、オムニチャネルの存在感をさらに高めることも可能となるだろう。また、小売業者はオペレーションに柔軟性を持たせるため、マイクロフルフィルメントセンターを展開したり、特定のいくつかの倉庫だけへの依存度を減らそうとしている。この流れに合わせて、Gap Incは1億4,000万米ドルを投じ、テキサス州に新たな配送センターを建設した。これは、COVID-19を機に急増したEコマース売上をサポートするもので、同社はロボットや自動化などの最新技術を駆使し、1日あたり約100万箱処理することを目指している。

新たなグローバル時代への対応

不確実性が高まる中、サプライチェーン、市場、オペレーション全体にわたる回復力の構築は、今やビジネスにおける重要な課題となっている。企業が将来的な変化を先取りするためには、新たなグローバルビジネスを形成する要因を理解する必要がある。進化し続けるトレンドを特定し、それらが世界の製造、貿易、金融、人の移動に対してどのような変化をもたらすかを知ることで、企業はリスクを軽減したり、世界中の供給や様々な市場へのアクセスをより安定させることができるだろう。

多様化、デジタル化、サステナビリティに関する戦略が、世界の製造業や貿易の情勢をどのように変えつつあるのか、また、それらがビジネスにどのような影響を与えるかについての詳細な分析は、レポート『Globalisation Beyond the Pandemic: Opportunities from a Great Reset』(有料)をご覧ください。 また、オンデマンドウェビナーExplaining (de)Globalisation: What’s Next for Companies and Investors?』(無料)もぜひご覧ください。

世界の国や地域の経済、金融、貿易に関する統計データや定性情報をお探しの方は、こちらまでお問い合わせください。

(翻訳:横山雅子)

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