中国は世界最大のスキンケア市場、そして世界で2番目に大きなカラー化粧品市場であり、2022年、同2カテゴリーの市場規模は合わせて490億米ドルに達した。中国国内のブランドに対する消費者の信頼は高まっており、2021年の同国スキンケア市場の上位10ブランドのうち4つを国内ブランドが占めるなど、Cビューティーブランドの地位が向上している。迅速な新製品開発、消費者の関与、「ソーシャル・セリング」(ライブストリーミング)などは、Cビューティー・ブランドが競争優位性を高める戦略の一部に過ぎない。中国の国民一人当たりのはスキンケアで29米ドルに達したが、カラー化粧品はいまだに6米ドルであることから、2023年、ポストコロナ期の市場回復を受け、Cビューティーには十分な市場機会がもたらされるだろう。
Cビューティーの人気を支える5つのカギ
1. 製品品質の向上 – 海外ブランドの安価な代替品からの脱却
かつて消費者は、Cビューティーを海外ブランドの「安価な代替品」として認識していた。しかし、ChandoやHerboristなどの伝統的なCビューティーブランドが、製品開発と若い世代をターゲットにした戦略によって新しい可能性を示す一方で、Winona、Zhuben、Florasisなどの新興Cビューティーブランドは、原料や製品タイプの領域でイノベーションを推し進めている。
スキンケアブランドのWinonaは、皮膚科医と連携し、独自の植物成分を用いて、敏感肌向けの革新的な処方を開発した。2022年、中国の消費者の14%がスキンケアを購入する際に敏感肌用の製品を求めたと回答しているが、Winonaは中国における原料主導型スキンケアの新時代を切り開いたと言っても過言ではないだろう。
Cビューティーの勢いに乗じて、かつてのB2B原料サプライヤーも、B2Cブランド事業に参入している。世界有数の化粧品原料サプライヤーであるBloomage Biotechは、同社のヒアルロン酸のサプライチェーンを活用し、プライベートブランド「Biohyalux」と「Quadha」を立ち上げ、コスト効果が高い製品を、消費者に直接提供している。
Source: Biohyalux
2. 変化が著しい市場を捉える迅速な新製品開発
Cビューティーブランドの製品開発をみると、彼らはヒット製品が生まれた際、そのSKUの評判をブランド全体に浸透させることが上手い。このアプローチは、製品開発の初期段階において限られたリソースを集中的に活用することを可能にする。例えば、FlorasisのルースパウダーやColorkeyのリップグロス、Zhubenのクレンジングオイルが好例だ。これらの製品は、まずサブカテゴリーレベルでヒット商品となり、その後ブランド全体を押し上げることとなった。
Cビューティーブランドはまた、速いサイクルでの新製品発売で消費者の需要を刺激している。Perfect Diaryは、すべてのメインカテゴリーでは半年に一度、サブカテゴリは四半期に一度、製品ラインナップを更新している。このスピードは、通常7か月から18か月の間隔でおこなう国際ブランドと比べてもはるかに速い。
Source: Colourkey
3. 消費者の声への柔軟な対応
Florasisは、約20万人の消費者を「experience officers(体験担当者)」として招き、発売前後に新商品の体験プログラムを実施した。同ブランドのアイブロウペンシルは、消費者のフィードバックを反映させながら、4年間で実に7回の改良を重ねている。Zhubenは、美容ソーシャルプラットフォームBevolと共同で、リペアオイルを1,400人以上の消費者とテストし、製品発売前に4つの評価軸でユーザー体験を分析した。従来、こうした発売前のテストは、主に安全性と効能の評価のために行われ、コストの問題もあることから、テスターの数は50人以下が一般的であった。このように新興Cビューティーブランドは、ソーシャルメディアでの影響力を活用し、より低コストで集めた消費者と共にイノベーションを生み出している。
4. Eコマースへの特化
Cビューティーブランドの成長に大きく寄与しているのはEコマースへの特化だ。実店舗チャネルで消費者にアプローチしていた従来のブランドとは異なり、新興CビューティーブランドはEコマースを主戦場とし、購買力が高まる若い消費者層を惹きつけている。
ユーロモニターによると、2022年、中国の美容・パーソナルケア市場においてEコマースが占める割合は43%であった。Eコマースは、新興ブランドにとってはマーケティングチャネルそして販売チャネルとして極めて重要な意味を持つ。ブランドが熾烈なオンライン市場で勝ち抜くためには、オンラインにおける消費者行動といったビッグデータをうまく活用しながら、的確にターゲット層へリーチし、提供する商品を継続的に最適化していく必要がある。
Source: Winona
Winonaは、アリババのビッグデータとマーチャンダイザーのセレクションに基づく戦略的製品開発プラットフォーム「Tmall Little Black Box」を活用したアンチエイジング美容液を発売した。
5. デジタルマーケティングとライブコマースでつかむ勝機
Cビューティーブランドは、KOLs(Key Opinion Leadersといわれる中国のインフルエンサーたち)と綿密に連携しながら、台頭するライブコマース(ソーシャルセリングまたはライブストリーミングとも呼ばれる)の影響力を活用している。Cビューティーブランドの売上の多くは、トップインフルエンサーのライブコマースによって生み出されており、その傾向は、大規模なセールが実施される11月11日(独身の日)や、その他のショッピングシーズンにおいて特に顕著である。トップインフルエンサーがもたらす売上が、そのブランドの年間売上の半分を超えることさえある。ライブコマースには国際的ブランドも参入するなど、今やショッピングチャネルの主流となっている。
Source: Florasis
Florasisは企業戦略として、KOLsと製品を共同開発している。同ブランドのルースパウダーはTmallでたちまち一番人気となったが、これはトップインフルエンサーのAustin Li Jiaqiのプロモーションなしには実現しなかっただろう。
Cビューティーブランドの長期的な発展における課題
Cビューティーブランドは、デジタル技術を駆使して効率化を図ることで、長年にわたり専門知識・技術を蓄積してきた多国籍企業とも、より公平に市場競争ができるようになるだろう。Jala GroupのChandoブランドは、サプライチェーンの効率化とウェアハウスの使用率および在庫を最適化すべく、システムのデジタル化と、これまで都市ごとに分散していた在庫を統合している。
Cビューティーブランドは、迅速な製品開発とデジタル化への精通により、短期間で市場を獲得することに成功した。しかし、ライブコマースへの規制が強化される中、それだけに頼っていては持続的な成長は実現できないだろう。Cビューティーブランドは、消費者とつながるための長期的なブランディングモデルを見つける必要がある。
また、2017年から2021年にかけて、中国のカラー化粧品市場におけるCビューティーブランド上位10社の合計シェアが15%から27%に増加したことを考えると、今後、Cビューティーブランド間のさらなる細分化と競争の激化が予想される。刻々と変化する美容市場において、持続的なブランド力と資産の蓄積は非常に重要であり、Cビューティーブランドの長期的な成功を考える上での指標となる。2023年は「ゼロ・コロナ」政策の終了により中国市場の回復が加速し、ペントアップ需要がCビューティーブランドの成長を後押しするだろう。
より詳細な分析についてはこちらのレポート Beauty and Personal Care in Chinaをご覧ください。