※本記事は英語でもご覧頂けます:Investment Banking: Utilizing Research to Put a Price Tag on Companies
投資銀行業務において最も重要なのは時間と正確さである。投資銀行家にとっては、着手している案件の潜在性を十分に理解するために、該当の産業、市場、そして企業に関する詳細かつ適切な情報が必要になる。市場調査は、企業の将来の成長の見通し、潜在的なリスク、機会や市場のパフォーマンスといった情報をもたらし、M&A(合併・買収)助言、証券引受および新規株式公開(IPO)に着手する前の戦略的アセスメントを手助けする。
本記事では、投資銀行家が潜在的な市場機会を理解するにあたり、そして企業の業績を明確に把握するために問うべき項目を考えるうえで、市場調査が大きな違いをもたらす主な領域を紹介していく。
資金調達と証券引受
資金調達をする場合、どのように企業の価値とリスクを判断し、証券価格を決定するかを考えて頂きたい。例えば、ある企業が、ほぼ完璧な財務諸表をあなたに手渡し、次の事業プロジェクトのために資金調達をすべく新しい証券を発行する際、より高い価格がつけられるべきだと主張したとしよう。この企業は、前年比10%という理想的な成長を遂げている。
- ただし、もしこの企業のセクターが、前年比20%で成長していることがわかった場合、証券の価格付けに影響を及ぼすだろうか?
- 同企業の主要ライバル企業達は、少なくとも年15%の成長を遂げており、同企業が参入していない市場にも進出済みである。
- 上記の事実は、当該企業の価値とリスクに関するあなたの考え方を変えるだろうか?
また、IPOを実施するにあたっては、TAM(Total Addressable Market、獲得可能な最大市場規模)を正しく理解するためにも、信頼性が高く且つ詳細な定量情報を使用しているだろうか?本当の意味での「SOP(Size of the Prize)」には、上場企業と非上場企業の両方から構成される市場と、あらゆるチャネルにおける該当セクターの売上が含まれる。潜在性を十分に理解するための正確なTAMは、店舗、オンライン、直販といったあらゆるチャネルで売上を上げている全ての競合企業を包括している必要がある。
M&A助言:デューデリジェンス、交渉、ポストディール過程における市場調査の活用
投資銀行が買い手側のアドバイザーとしてM&A助言を行う場合には、以下のような項目を確認することが、ターゲット企業の正確な財務状況を把握するために役立つ。
- 買収対象企業の成長の源泉は何か?
- 買収対象企業のポートフォリオの中で、成長しているブランド・製品ラインと衰退しているブランド・製品ラインの比率は?
- 対象企業が事業を展開している国・地域は、同企業および該当セクターにとって理想的なマクロシナリオを示しているか?
- M&A実施後の合計シェアはどうなる?
- これら上記の情報は、交渉プロセスにどのような影響を与えるか?
カギとなるのはデータのきめ細やかさだ。交渉においては、セクターおよびサブセクターに関する詳細な情報、ターゲット企業の製品ラインおよびブランドの包括的な分析、該当市場国・地域におけるマクロ環境やの消費者嗜好に基づき主要な消費者トレンドを理解することによって優位性がもたらされる。
反対に、売り手側の代理人としてM&Aに取り組む場合、以下のような項目が考えられる。
- 買い手側が示すべき適正なオファーとは?
- そのオファーは、そのセクターやサブセクターにおけるクライアント企業の業績に見合ったものか?
- クライアント企業が買収または合併された後、該当のサブセクターの市場規模は成長していくだろうか?
交渉の主導権が売り手側にあることもある。いくつかの重要なポイントを分析する能力を有するM&Aチームは、戦略や交渉の過程でより強力に主張していくことができる。そのようなチームは、該当セクター内におけるクライアント企業のポジショニングを、総合的な企業のシェア、予測されるセクター内での機会とリスク、および経済成長といった背景と共に提示し、セクターの流通トレンドを通してクライアント企業のサプライ戦略を伝えることができるのである(市場調査がM&Aをいかに支援できるかをより詳しく見る)。
ユーロモニターは、世界中の大手、ミドルマーケット、ブティック型の投資銀行と提携しており、同社のフラッグシップ市場調査データベースであるPassportやその他のリサーチソリューションを通じて、上記に挙げられた質問すべてに対応している。まず、Passportデータベースでは、世界100か国の消費財セクターの市場規模、上場企業および非上場企業の企業シェアやブランドシェア、流通チャネルごとの売上といった基礎的な分析、そして世界210か国分の詳細なマクロ経済指標および社会経済関連統計を提供している。さらに、IPO用のカスタム調査やコンサルティング調査ソリューションにより、投資銀行の皆様が持つ特定のビジネス課題も支援している。また、ユーロモニターのEコマース内製品追跡ツール「Via」は、中小企業や新興企業を含む買収対象企業について、製品価格のポジショニング、長期的なポートフォリオの変動、デジタルシェルフ上のシェア、消費者の満足度やエンゲージメントに関する指標といった豊富な評価指標を提供し、助言業務をサポートしている。
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