※本記事は英語でもご覧頂けます:Global Pet Care Benefits from Uptake in Pet Ownership During Pandemic
多くの国では新型コロナウイルス(COVID-19)まん延防止のための規制が緩和され、店舗やレストランの営業再開が進んでいる。そうした中で、消費者はペット関連製品にもお金をかけるようになり、ペット用のおやつ、ヘルスケア、おもちゃ、アクセサリーなどへの支出額は、今後ますます増加することが予想される。また、ペットフードのような必需品よりも、より裁量的なペット製品が、景気の回復、特に新興国における復調の恩恵を受けるようになるだろう。
2020年、欧州、北米、ラテンアメリカ、オーストラレーシアではペット数の増加率が最も高く、世界のペットケア製品売上高の伸びを支える結果となった。家に閉じこもりがちな消費者は、その孤独感を解消するため、ペットを家族として迎え入れるようになった。
リモートワークはパンデミック後も推進され、消費者はフルタイムまたは週に数日など一定のペースで仕事を自宅で行うようになり、今後も「ニューノーマル」として定着するだろう。リモートワークはペット飼育を後押しするだけでなく、コンパニオンアニマルとの絆を深める時間を増やし、ひいてはペット飼育世帯数の増加にもつながることから、ペットケア製品へのニーズをさらに高める重要な要因といえる。
ペットケア製品:世界市場の推移(小売販売額ベース)
Source: Euromonitor International from Passport
地域で異なる傾向:新興国ではキャットフード、先進国ではペットの家族化トレンドが主な成長要因
アジア太平洋地域では猫の飼育頭数が大幅に増加しており、この傾向は予測期間中(今後5年間)も続くとみられる。さらに、アジアでは野良猫に餌を与えて世話をする傾向があり、このこともキャットフードの売上増に寄与すると思われる。これらの要因を踏まえ、アジアのキャットフード市場を牽引するのは中価格帯の製品になるだろう。一方で、先進国地域では、予測期間にわたって高価格帯のセグメントが成長を牽引すると予想されている。アジア太平洋地域では、価格設定を低くすることで、ペットオーナーが家庭から出る食べ残しの代わりに、市販のペットフードに容易に切り替えることができるようになっている。
一方、北米、西欧、オーストラレーシアでは、パンデミック後にペット数の伸びが緩やかになることが予想される中、「ペットの家族化」がペットケア市場の主な成長要因となるだろう。これらの地域では、飼い主が様々な方法でペットを家族として大切にしようとしていることから、最も成長が見込まれるカテゴリーはペット用品となるだろう。特に、スマートペットアクセサリーなどのデジタル製品が積極的に市場に投入されており、ロックダウン期間も、自宅用のトレーニングやグルーミング製品が注目された。
ペットケア製品:各国市場で最も急速に成長した製品カテゴリー(左)と2021年に売上高の大きかった市場TOP20(右)
Source: Euromonitor International from Passport
グローバル大手は堅調を維持、新興国ではローカル企業が台頭
2020年のペットケア製品世界市場を牽引し、確固たるポジションを維持したのはNestlé SA(ネスレ)とMars Inc(マース)の2社であった。前者は高まる需要に対応し金額ベースでシェアを拡大し、後者は競争が激化した市場でシェアをわずかに落としたものの、全体では売上を伸ばし世界トップとなった。ブランド別に見ると、マースで最も売れ行きの良かったPedigree(ペディグリー)、Royal Canin(ロイヤルカナン)、Whiskas(カルカン/ウィスカス)の3ブランドが上位をキープした。これら3ブランドの好調の背景には、パンデミック下で、消費者が慣れ親しんだブランドを好んだことがある。Colgate-Palmolive(コルゲート・パーモリーブ)のHill's(ヒルズ)は、科学に基づくアプローチを行うブランドとしての位置付けから、免疫力の向上などペットの健康問題に関心のある消費者の支持を得て、2020年は好調に推移した。
アジアでは、値ごろ感のあるローカルブランドがシェアを拡大させた一方で、大手企業は市場シェアを大きく失いつつある。例えば、中国のXuzhou Suchong Pet Productsは、金額ベースの年平均成長率で104%を記録した。同社は製品をより手頃な価格帯に設定し、若いペットオーナーのニーズをよく理解したサービスを提供している。また、デジタルファーストの流通戦略によって、地方都市を含むこれまであまりリーチできなかった地域の消費者にも対応できるようになっている。
2020年のプライベートブランドのパフォーマンスを見るとパンデミック時に買いだめによる供給問題が発生したこともあり、シェアの拡大は見られなかった。しかし、西欧地域では、パンデミックの影響による所得減少を受け、その価格競争力もありトップシェアを維持した。
サステナビリティ:ペットケア製品で最も重要なイノベーション分野
今後5年間のペットケア業界では、持続可能性を考慮したエシカル製品が勢いを増すと考えられる。ペットケア製品企業にとっては、サステナビリティ戦略を策定し、この分野における明確な目的意識を掲げ、ペットオーナーに発信していくことがより重要となる。
また、ペットオーナーは、非オーナーに比べてサステナブルな生活のための行動をとることに積極的である。そのため、サステナビリティがペットフードやペット製品の購入にもたらす重要性は、ますます高まっている。これを踏まえ、世界のペットケア製品業界では、パッケージングと原材料の両面から新製品の開発を進めている。
ユーロモニターインターナショナルの「商品訴求とポジショニング」データベースによると、同社が2020年に追跡した世界のペットケア製品約410万SKUの中で、エシカルラベルとして動物福祉、環境への配慮、持続可能なパッケージ、持続可能な調達などを訴求している製品数は、前年に比べ11%増加した。さらに最近では、昆虫を使ったペットフードやヴィーガン・ペットフードが、サステナビリティへの意識が高い飼い主から注目されており、今後は、このような製品の人気がさらに高まるだろう。
世界のペットケア製品市場:訴求のあるSKU数(2019年/2020年)
Source: Euromonitor International, Product Claims and Positioning
詳細については、『World Market for Pet Care』レポート(有料)をご覧ください。また、ペットケア製品業界の統計データや定性情報にご興味のある方は、こちらまでお問い合わせください。
(翻訳:横山雅子)