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パンデミック禍で出生率は上がったか、下がったか

12/13/2021
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※本記事は英語でもご覧頂けます:Boom or Bust: Birth Rates During the Pandemic

世界の出生率は過去5年間、低下が続いている。一部の専門家は、パンデミックによる社会的流動性の制限が出生率の上昇につながると予想していた。しかし2020年、その予想は的中するどころか、世界の出生率は1970年代以来、最も急激に低下することとなった。

2020年の出生率は3%低下

歴史的に見ても、経済ショックは出生率の低下につながることが多い。例えば、2008年の金融危機の後、出生率は3年連続で1%の低下を見せた。一方、2020年には、経済不安の拡大、失業率の上昇、医療サービスの制限、学校や保育園が閉鎖されたことで親たちが仕事と家庭を両立させなければならないことから生じた疲弊など、複合的な影響により、出生率が1年間で3%以上も急落した。ただし、平均的な妊娠期間が約9か月であることから、パンデミックの影響が完全に表れたのは2020年の第4四半期に入ってからといえる。平均を上回る出生率の低下は、2021年から2022年にかけても顕在化すると予想されている。

図表1 1978年~2040年にかけての世界の出生数

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Source:    Euromonitor International from national statistics
注:2021年~2040年のデータは予測値

2020年、アジア太平洋地域とラテンアメリカ地域では人口1,000人当たりの出生数が5%減少し、中でも中国は、パンデミックと長年にわたる一人っ子政策の影響から19%という記録的な減少となった。中国は、2016年に一人っ子政策を撤回し、2020年には一家に2人、2021年には3人にまで緩和されたが、現在も少子化の罠にはまり続けており、今後もその傾向が続くことが予想される。

図表2 2020年の地域別の出生率

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Source:    Euromonitor International from national statistics

世界の出生率低下は長期的な課題

過去のデータを分析すると、パンデミックが長期的な構造的傾向を悪化させていることは明らかである。都市化、医療アクセスの改善、教育や仕事に従事する女性の増加、避妊意識の向上、初産年齢の上昇などが、出生率低下の背景にある。2000年から2020年の間に、世界の出生率は21%低下し、特にラテンアメリカ地域とアジア太平洋地域では、人口1,000人当たりの赤ちゃんの数が3分の1に減少した。東欧地域では出生率が安定すると予想される一方で、その他の地域では2020年から2040年にかけて、さらに出生数が減少すると考えられている。日本、イタリア、スペイン、ポルトガル、韓国などの国では、今世紀末までに人口が半減する可能性がある。

図表3 2000年~2040年の地域別の出生率と年平均成長率(%)

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Source:    Euromonitor International from national statistics
注:2021年~2040年のデータは予測値

人口増加を促すために、各国は出生率向上のインセンティブを用いて、女性1人当たりの子供の数が2.1人という人口置換水準まで出生率を高めようとしている。例えば、フランスは、保育料の補助や手厚い給付制度など、幅広い社会政策を取ることで、先進国の中で最も高い出生率を維持している。また、北欧諸国も、女性と母親の雇用率がEUで最も高く、保育サービスも充実していることから、比較的高い出生率を保っている。

図表4 2020年の先進国の出生率

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Source:    Euromonitor International from national statistics

適応する世界

出生率の低下は、産科医療の向上や女性教育の充実といった、本来好ましい傾向と高い相関関係があるが、経済発展につながらないという課題もある。出生率の低下は、将来の税収の減少を意味し、高まる退職率とそれに伴う社会保障給付と相まって、国家予算の不均衡を招くことになる。すでに、多くの国では出生率の低下によって労働力不足が生じている。

こうした問題を緩和するために、移民を積極的に受け入れる政策を取っている国も多い。例えば、カナダは、2021年に、全人口の1%に当たる40万人以上の新規永住者を迎えることになっている。しかし、世界の移住はゼロサム・ゲームだ。高い移民率を享受する国がある一方で、人口流出に悩まされる国もある。

企業もこうした変化に対応していかなければならない。10年前、人々は職をめぐって激しく競争していたが、今では企業が自社の空席を埋めるために人材をめぐって争っている。人々は、お金だけでなく、リモートワーク制度や企業文化、様々なベネフィットなど、総合的に魅力的な職場を探している。アマゾンが提供する授業料補償や、Whoopが提供する睡眠ボーナスなど、人々は自分の価値観やライフスタイルに合った企業を選んでいる。また、少子高齢化が進むにつれ、家族向けの商品から高齢者向けの商品へとビジネスモデルの転換や調整が行われるなど、企業間では消費者をめぐる競争が激化していくだろう。

世界各国・地域の人口に関する統計データや定性情報についてお探しの方は、こちらまでお問い合わせください。

(翻訳:横山雅子)

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