※本記事は英語でもご覧頂けます:Sustainable Packaging in Pet Care
前回のブログ『ペットフードにおけるサステナブルな原材料:課題と機会』では、ペットフードの原材料に見られるサステナビリティトレンドを紹介した。ペットフードのパッケージにおいても同様に、サステナビリティの重要性が高まっている。しかしながら、ペットケア業界全体の成長およびパッケージの小型化や個包装タイプの増加もあり、ペットケアは他の消費財カテゴリーと比較してもパッケージの販売個数が急増していることが、業界の課題となっている。
中でも特に問題になっているのは、プラスチック製パッケージの増加である。2010年には金属製のパッケージが最も多く、金属と紙ベースのパッケージの合算が過半を占めるなど、プラスチックを使用したパッケージの合算を上回っていたが、2020年にはその形勢が逆転し、金属、紙ベースのものが減少し、プラスチックを使用したパッケージの合算が約6割を占めるようになった。プラスチックを使用したパッケージの中でも、特にリサイクルが困難とされる、表面にプラスチック裏面にアルミが使用されているものなど、混合タイプが大きく増えている。
一方で、ユーロモニターインターナショナルの「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ(2021年)」によると、世界のペットオーナーの約半数がサステナブルなパッケージを選ぶようにしていると回答しており、ペットオーナーのサステナビリティに対する関心の高さが伺える。さらに注目すべき点は、その割合が非ペットオーナーと比較しても総じて高く、ペットケア製品におけるサステナブルパッケージングが大きく成長する可能性を示唆している。
サステナブルパッケージへの取り組み
ペットオーナーの間でサステナブルなパッケージへの需要が高まる中、環境に優しいパッケージの採用が徐々に進んでいる。特に、プラスチックごみの増加が世界的な問題になっていることから、多くの企業が代替素材やより持続可能なプラスチックに置き換えることで、プラスチック使用量を減らす努力をしており、例えば、ベルギーのEdgard & Cooper(エドガード・クーパー)は2021年に一部の商品で100%紙ベースのパッケージを採用し、アメリカのNature's Logic(ネイチャーズロジック)は2020年にプラスチック・ニュートラル認証を取得した初のペットフードブランドとして注目を集めている。
また、コロナ禍では衛生面での懸念から使い捨て容器包装へのニーズが高まったものの、リユースやリフィルなど、使い捨て容器包装廃止の動きも引き続き見られた。例を挙げれば、カナダのOpen Farm(オープンファーム)は、ペットフードメーカーとして初めて循環型プラットフォームであるLoop(ループ)と提携した他、Nestlé Purina(ネスレピュリナ)は、スイスの一部店舗で試験的に量り売りのリフィルステーションを設置した。
このようなメーカー主導の取り組みに加え、小売企業もメーカーと連携して様々な取り組みを始めている。例えば、英国の大手ペットショップPets at Home(ペットアットホーム)は、Mars(マース)とネスレピュリナの支援を受け、使用済みパッケージの店舗回収を開始し、米国の大手ペットショップCanidaeは、一部の店舗で量り売りのリフィルステーションを設置するなど、サステナブルなパッケージに向けた取り組みはますます加速している。
今後の展望
サステナブルなパッケージに対する世界的な消費者需要の高まりに加え、日本でも2022年4月から新たにプラスチック資源循環促進法が施行されるなど、プラスチック廃棄物を減らすための規制を導入する国が増加している。これらの規制に対応する意味でも、サステナブルなパッケージへの投資は、もはや「できればやるべきこと」ではなく、業界で生き残るために「やらなくてはならないこと」になりつつある。企業が単体でできることは限られるため、ペットケア業界や国を超えてパートナーシップを結び、消費財業界全体が直面しているこの大きな課題に対処していくことが重要である。
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