あらゆる国で生活コストが上昇する中、世界のスナック市場規模は活発な新商品の発売や健康的なスナックの好調などを背景に、2023年に前年比6.7%となる6,510億ドルへと成長を見せた。日本国内においても、人気キャラやアイドルとのコラボレーションやイベント企画の開催などで市場が活発化する傾向が見られる。消費者の嗜好や生活に根付いた市場の最新動向を紹介する。
目次
世界市場について
世界のスナック市場全体の小売金額は、過去10年で約20%増加している。欧米各国で特にインフレの影響が強くなった2021年ごろから小売金額ベースでの成長が加速しており、2023年も前年を大きく上回る形で着地した。
向こう5年の年平均成長率は5.5%(Current, USD)と更なる拡大が見込まれており、過去5年の年平均成長率である約4%からさらに飛躍する見込みだ。世界最大のスナック市場である北米、次いで大きなアジア、その次を進む西ヨーロッパが世界のスナック売上の大部分を占めており、さらに、これら3つの地域が速いスピードでスナック市場の売上を押し上げている。
また、価格増という向かい風を受けながらも、2023年のスナック市場は小売金額ベースだけでなく、小売数量ベースでもさらなる成長を遂げた。この背景には、新商品発売の活発化やフルーツスナックなどの健康的なスナックの好調がある。
スナック市場が拡大を続ける中、長引く世界的な価格増に対抗すべく、消費者は日々戦略的に節約に努めている。支出に対して厳しくならざるを得ない消費者たちは、ディスカウンターや、コストコなどの倉庫型店舗といった、価格アピールの強い店舗での買い物や、E-Commerceでバルク買いやタイムセールを狙うなどして、賢く買い物をしている。スナック商品の美味しさや利便性といった側面と同様、もしくはそれ以上に、価格に焦点が向けられている。
日本市場について
日本スナック市場のホットトピックは以下の3つである。
- 人気キャラやアイドルとのコラボレーションが定番化
- プラントベースのアイスクリームが多数登場
- グミがさらに拡大、集客にも寄与
人気キャラやアイドルとのコラボレーションが定番化
大手ブランドのロングセラー商品を中心に、人気アニメやアイドルとのコラボレーションが活発に行われている。例えば、2023年の代表的ヒットキャラクターである「おぱんちゅうさぎ」や、「推しの子」などの人気アニメとのコラボレーションは大きな話題となった。中でも、商品を購入すると無料で限定グッズがもらえるプロモーションは、コンビニ大手やスーパー・ドラッグストアなどの小売店で実施され、アイスクリームやチョコレートといったカテゴリーで売上増に直結する盛り上がりがみられた。
出所:株式会社明治
これらのプロモーションは、メーカーサイドとしては商品パッケージをコラボレーション仕様に変更する必要が無いため、生産・在庫管理が複雑化しない利点がある。在庫管理の点は小売店にとっても利点であり、また、プロモーション商品を陳列するスペースを設ける必要はあるが、集客に大変有効であり小売店としても魅力的である。
ファンにとっては、コラボ対象商品の購入代金のみで手軽に自分の好きなキャラクターやアイドルの商品が手に入り、また、昔から知っているロングセラー商品とのコラボレーションの場合には、味への信頼はすでにあり、購入に前向きになれる。今後も引き続きこのような、コラボ対象商品購入で限定グッズが無料でもらえるプロモーションが日本のスナック市場で活発にみられるだろう。
プラントベースのアイスクリームが多数登場
2024年2月にはクラシエ株式会社が植物性ミルクを使ったアイスクリームブランド「フロムグリーン」の発売を開始した。3種類のアイスクリームは、それぞれアーモンドミルク・オーツミルク・豆乳を原料とし、乳成分不使用でありながらカカオニブやシュガーコートアーモンドなどのナッツ類を混ぜ込み、満足感を感じられる味わいとなっている。また、2024年3月には森永製菓株式会社が国産米でできたライスミルクや米粉を使用したアイスクリームの「OKOMETO」を発売した。
出所:森永製菓株式会社
「OKOMETO」は、米粉を専門とした料理研究家などのスペシャリストやインフルエンサー、また同社のファンサイトで募集した食品アレルギーのこどもを持つ親の意見を活かして開発されており、動物性原料や乳・卵・大豆などアレルギー物質28品目は不使用となっている。同社は甘酒市場を牽引し続けており、甘酒生産の知見を活かし、優しい甘みが感じられる商品を作り上げた。乳代替品は日本でも拡大を続けているが、代替乳を売りにした商品であっても、完全に乳製品を含まない商品は実は少なく、多くのケースで代替乳と乳製品の両方が使われている。一方で、日本国内の食品アレルギー症例数は増加の傾向にあり、2023年の食品表示基準改定では、食品アレルギーの義務表示対象品目(特定原材料)にくるみが追加されるなど、関心が高まっている。
グミがさらに拡大、集客にも寄与
過去10年の日本のスナック市場において、最も成長したカテゴリがグミだ。グミは、手が汚れず『ながら食べ』に適しており、咀嚼音が小さいのでオフィスなどでも食べやすい。また、果汁やコラーゲンが含まれており、その他スナックと比較しても健康的であるとされ、現代のライフスタイルに合ったお菓子として広く愛されている。
小売店での取り扱い数や売り場面積は拡大傾向にあり、SNSでのバズりを経験する商品も少なくない。子供のおやつとして定番であったグミが、近年では大人も満足できる商品が多数発売され、フレーバー展開から噛み応えやふわふわ食感などのテクスチャー展開へとイノベーションが進化している。また、「地球グミ」やUHA味覚糖の「水グミ」などに代表されるような、商品の見た目に強い注目が集まるケースや、カンロ株式会社が2023年発売した「空想果実」のような、世界観全体を楽しむコンテンツとして好まれる商品も出てきている。
出所:カンロ株式会社
このような関心の高まりを、小売企業もチャンスと捉え、株式会社ロフトは2023年に引き続き2024年も、日本国内外のグミを集めた祭典Gummy Weekを開催した。輸入グミやローカルグミなどのめずらしいグミが多数集まるイベントとして、大きな注目を集めた。
まとめ
プレミアム化が続くスナック市場において、高級チョコレートなどは嗜好品として楽しまれるようになった。また、ロングセラー商品は、幼少期から親しみ続けた味わいに情緒的な喜びを覚えるものとして、多くの消費者の心に寄り添っている。一方で、食品という、生きていく上で欠かせないものでありながら、スナック商品を生活必需品とみなす消費者ばかりではない。
ユーロモニターインターナショナルの消費者調査・ライフスタイルサーベイでは、世界各国の間食習慣についての回答を見ることができる。コロナ禍では、自宅での『ながら食べ』によるスナックの需要増が多くの国で確認できた。この『ながら食べ』の習慣は減少傾向にあり、一方で、近年スナックを食べる理由として「不足している栄養素を補うため」や「ご褒美として」の間食が増えていることが分かった。急速な価格増がありながらも小売数量ベースで成長するという勢いを保持したまま進むために、スナック商品はより多くの消費者の日常に入り込む必要がある。好調に推移しているフルーツスナックなどの健康的な商品や、ご褒美としての役割を果たしてくれる商品に大きなビジネスチャンスがあるだろう。
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