※本記事は英語でもご覧頂けます:Where to Play: Pet Care Sustainability Index
ペットフードに使われる原材料やパッケージに見られるサステナビリティのトレンドは、すべての国において同じレベル感で起きているわけではない。そこで、ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、ペットケア業界においてサステナビリティの重要度が高い市場を特定するための「ペットケアサステナビリティインデックス」を作成した。同インデックスを作成するために使用した指標は次の3つである。
- 市場環境: オンライン上で販売されている商品の訴求内容別にSKUをトラッキングする当社の「商品訴求とポジショニング」データベースを使用。国、ブランド、商品カテゴリーといった切り口から、どのような訴求内容がトレンドとなっているのか、その国やカテゴリーにおいてどの程度普及しているのかなどを分析することができる。今回は、同データベースを基にサステナブル関連の商品訴求が全体に占める割合を国別に算出した。
- 消費者行動: 世界40か国の消費者を対象に、ライフスタイルに関する様々な項目についてサーベイ調査を実施する、当社の「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」を使用。今回は、同サーベイ調査から、サステナブルなパッケージの使用、グリーンラベルに対する信頼度や、気候変動に対する懸念など、サステナビリティに対する行動・価値観に関する質問項目のうち、ペットオーナーの回答結果の平均値を国別に算出した。
- グリーンマクロ環境: レジリエンス、森林と生物多様性、汚染、エネルギー、水、食糧の6つの主要課題から構成される定量的ベンチマークモデルで、各国におけるサステナビリティ環境を評価し、ランク付けをする「ユーロモニターサステナビリティインデックス」を使用。同インデックスの国別スコアを使用した。
これら3つの指標がすべて揃っている30か国を対象に、各指標について100を最大値としてスコア化し、国ごとの3つの指標の合計スコアを算出した。
北米、オーストラレーシア、西欧地域がペットケアにおけるサステナビリティを牽引
ペットケアサステナビリティインデックス総合順位の上位は北米、オーストラレーシア、そして西欧諸国が占めている。サステナビリティ先進国として知られる西欧諸国は「グリーンマクロ環境」のスコアが高い一方、その圧倒的な市場規模からペットケアにおける商品開発を牽引する米国が「市場環境」と総合順位で首位に立った。すでにサステナブル関連商品が比較的普及しているこれらの地域では、商品開発をする際にサステナビリティを視野に入れることがもはや必須といえるだろう。
< ペットケアサステナビリティインデックス 上位1-15位>
ホワイトスペース:「消費者行動」と「グリーンマクロ環境」が示す市場ポテンシャル
同インデックスの総合順位において、新興国の多くは特に現時点でのサステナブル商品の普及度を表す「市場環境」が圧倒的に低いものの、他の構成要素である「消費者行動」に着目すると、今後サステナブル関連分野で大きく伸長する可能性を秘めた市場が見えてくる。
総合順位は4番目に低いタイは、「消費者意識」では2位にランクインしており、ペットオーナーのサステナビリティへの関心が高い、またはすでに環境・社会貢献活動に取り組んでいることを示唆している。同国では特に代替タンパク質分野が大きな注目を集めており、昆虫タンパク質を使用したドッグトリーツ「Laika」を提供するスタートアップ企業Orgafeed(オルガフィード)が水産大手Thai Union(タイ・ユニオン)から出資を受けるなど、この分野でのイノベーションと投資が活況を呈している。また、チリも総合順位は低いものの、「消費者意識」では5位にランクインし、昆虫プロテインベースのドッグフードを提供する「Circular Pet」など、新興サステナブルブランドが登場している。
同様に3つ目の指標、「グリーンマクロ環境」からはグリーンビジネスの商機拡大の潜在性が伺える。例えば、総合順位で最下位から数えて5番目の韓国は、オーガニック分野でアジア太平洋地域を牽引しており、「グリーンマクロ環境」においてスコアが高い。ペットケアカテゴリーにおいては現時点でオーガニックの商品展開が限定的であるものの、韓国を拠点とするオーガニックペットフードブランド「Natural Core」は、同国の他、マレーシアなど他のアジア市場にも販路を拡大し、大きく成長している。
このように、「消費者意識」や「グリーンマクロ環境」の観点から今後サステナブルなペットケア商品に対する需要拡大が期待される市場においても、中長期的な目線でサステナビリティ分野に投資することが重要である。
< ペットケアサステナビリティインデックス 16-30位>
今後の展望
上記の通り、ペットケア業界では、北米、オーストラレーシア、西欧地域が、市場環境等からサステナビリティにおける重要市場となっているが、アジアやラテンアメリカの新興国もまた、「消費者意識」や、「グリーンマクロ環境」の観点から非常にポテンシャルの高いマーケットである。比較的所得の低いこれらの地域では、いかに価格を抑えられるかが、サステナブルなペットケア商品拡大の鍵となるであろう。