- 2023年、アジア太平洋地域は世界のカード決済最大市場であり、全世界のカード決済取引総額の57%を占める
- 日本は、過去5年間の個人カード払い総額(小売金額ベース)の増加において、アジア太平洋地域では中国に次ぐ2位の規模拡大を記録
- 日本におけるデビットカード取引額の過去5年間の年平均成長率(CAGR)は22%と、アジア太平洋地域の中では2位の成長を記録
- 日本政府が2018年に発表した「キャッシュレス・ビジョン」が、国内のキャッシュレス化の推進に貢献したと分析
【東京】国際的な市場調査会社であるユーロモニターインターナショナルは、「アジア太平洋地域のファイナンスカード・決済取引市場レポート」2024年版を発表しました。本レポートは、アジア太平洋地域のファイナンスカード・決済取引の最新市場動向と、今後の成長機会および国別の市場概略(日本、中国、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナム、韓国、タイ、マレーシア、香港、台湾、シンガポール)を分析、考察しています。
本レポートによると、アジア太平洋地域は、2023年のカード決済世界市場における最大の地域であり、世界カード決済取引総額のうち、実に57%を同地域が占めています。また、同地域のカード決済は、向こう5年間(2023年~2028年)にかけても、クレジットカードとデビットカードを中心に更なる成長が見込まれます。
日本市場については、過去5年間(2018年~2023年)で個人カード払い総額(小売金額ベース)が2,517億米ドル増加するなど、アジア太平洋地域の中では中国に次いで2番目に大きな市場拡大を示した一方で、同期間の現金決済取引の減少規模は2,630億米ドルと、こちらも中国に次いで2番目に大きな縮小となりました。
アジア太平洋地域における各国の個人カード払い総額の増加額
(小売金額、名目値ベース)(2018年~2023年)(単位は100万米ドル)
ユーロモニターインターナショナルは、日本のキャッシュレス社会への移行は、政府が「キャッシュレス・ビジョン」構想を熱心に推進したことで加速したと分析しています。2018年に策定された同構想は、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に引き上げることを目標としています。
この機運の中、特に、デビットカードについては、カード会社各社がキャッシュバックキャンペーン等によって利用を促進し、口座残高以上の金額を使えないという予算管理上の利点や安心性、年会費無料といった特長に関する人々の認識も高まりました。また、デビットカードの使用開始年齢はクレジットカードと比べて低いということから、若い世代のキャッシュレスへのシフトにも貢献しました。
アジア太平洋地域における各国のデビットカード年平均成長率
(名目値ベース)(2018年~2023年)
2023年、日本におけるカード決済取引総額の内訳は、クレジットカードの91%に対して、デビットカードは2%に止まっているものの、前述のような経緯から、過去5年間の年平均成長率(CAGR)は、クレジットカードの9%に対しデビットカードは22%と、日本はデビットカード取引額の成長率が、アジア太平洋地域の中でも2番目に高い国でした。 今後についても、日本市場ではクレジットカードが引き続き支配的である中、デビットカードは2028年までにCAGR 15%と、より力強い成長を続けると予想されます。
キャッシュレス化の推進を巡る民間部門の取り組みの例としては、SMBCグループが2023年3月、キャッシュカード、クレジットカード、デビットカード、ポイント払いの4つの機能を1枚に集約したカード「Oliveカード」を導入しました。Oliveカードは、利用者に柔軟性と利便性を提供することを目的としていて、利用者は複数のカードを保有・管理する必要がなくなります。
社会の高齢化は、日本において主要な課題であり、国内の決済業界にもたらす影響も大きくなっています。 高齢者が人口に占める割合が増え続ける中、その多くは、デジタルバンキングや最新の金融システムにあまりなじみがありません。今後、高齢者層が利用しやすく分かりやすい金融サービスを提供し、包摂性を確保することが極めて重要となると思われます。
より詳しい事例やデータをお探しの方は、Financial Cards and Payments in Asia PacificまたはFinancial Cards and Payments in Japanをご覧いただくか、弊社までお問い合わせください。
-以上-
報道関係の方のお問い合わせ先:
ユーロモニターインターナショナル 広報担当
花﨑 真夕(はなざき まゆ)
Tel: 03-3436-2100
mayu.hanazaki@euromonitor.com
ユーロモニターインターナショナルについて
ユーロモニターインターナショナルは、英国ロンドンに本社を置くグローバル市場調査会社です。世界16か国にオフィス、100か国に現地アナリストを配置し、市場分析レポートやデータベース、カスタマイズ化されたコンサルティング調査をもって、企業の皆様の、いつ、どこで、どのようにビジネスを成長させるべきかという意思決定のお手伝いをしています。戦術的(Tactical)かつ戦略的(Strategic)である当社の調査ソリューションは、最新のデータ分析技術を利用、都市圏単位からグローバル市場までをカバーし、世界市場の様々なトレンド・成長要因に関する情報を提供することで、事業における優先順位の見極めや仮説の見直し、潜在的なビジネス機会の発見にお役立ていただけます。