Eコマース小売世界市場の40%を占める日中韓― オンライン購入割合の高い産業カテゴリーとその理由

8/28/2024
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  • 日中韓3か国だけで、Eコマース小売世界市場売上の40%を占める
  • 日中韓でオンライン購入の割合が高いのは、美容・パーソナルケア、OTC・ヘルスケア、ペットケアカテゴリー
  • オンライン購入の理由として、消費者は利便性の他、実店舗にはない豊富な品揃えを上位に回答
  • 日本では、ホームケア、ペットケア、アルコール飲料業界において(実店舗・Eコマースを合わせた)全体市場とEコマース市場とで競合状況が似ており、食品業界ではEコマース特有の競合状況が見られる
  • 2023年、RTD茶の国内市場全体が低調な中、「お~いお茶」のEコマース売上は前年比50%増を記録


【東京】英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)はこの度、日中韓3か国のEコマース市場に関する最新調査結果を発表しました。

同調査結果によると、2023年、日中韓3か国は、世界のEコマース小売市場全体の実に40%を、アジア太平洋地域 のEコマース小売市場全体の87%を占めています。今後数年間、新興国におけるEコマース市場の強い成長が予想される中、日中韓3か国はデジタルインフラが十分整備されていることもあり、2028年時点でも、アジア太平洋地域全体の85%を占める主要Eコマース市場でい続けることが予測されています。

 

Eコマース比率の高い産業とその理由 

各産業カテゴリーごとのEコマース比率(総小売販売規模にEコマースが占める割合(販売額ベース))を見ると、日中韓の3か国に共通して、美容・パーソナルケア、OTC・ヘルスケア、ペットケアのカテゴリーは、オンライン購入の割合が高いことがわかります。また、日本では、2022年から2023年にかけて、ソフトドリンク、家庭紙・衛生紙、ペットケアのカテゴリーでEコマース比率の高まりが見られました。

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Eコマース比率の高い業界の特徴について、当社の木村幸コンサルタント(小売業界担当)は、以下のように述べています:

「美容・パーソナルケア、OTC・ヘルスケア、ペットケア製品等、オンラインで購入される傾向が高い産業カテゴリーに共通して言えることは、購入頻度がそれほど高くないことに加え、個人の嗜好に基づき、好みやこだわりが商品選択に大きく反映される傾向の強いカテゴリーであるということだ。このようなカテゴリーは、都合の良いタイミングで注文でき、選択肢を多く提供するEコマースとの親和性が高い。 TikTok中国版であるDouyin(抖音)が、消費者のSNS上での行動に基づいて興味や関心に沿った商品を提案し購入させるInterest-based E-Commerceという手法を用いて急成長を続けているが、この手法と相性が良いのも、こういった個人の嗜好が強く反映されるカテゴリーである」

実際、2024年に実施したライフスタイルサーベイにおいてEコマースで購入する理由を日中韓の消費者に聞いたところ、「オンライン上での豊富な品揃え、実店舗にないブランドもあるから」という理由が上位に挙がっています。

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「Eコマースで購入するか否かについては、利便性という側面も強く、特にペットケア製品については、まとめ買いをして配達してもらった方が実店舗よりも安い上に、便利で楽という理由でオンライン比率が上昇している。逆に、食品、飲料のEコマース比率が低いのは、購入頻度も高く、近くの実店舗ですぐに購入したほうが便利と感じられるためと考えられる(木村)」

 

今後も成長するEコマース、産業毎に競合状況を見極めることが必要

業界の主要企業によるEコマース市場の支配力の程度を示す当社のデジタル支配力指数*を見ると、日本では、ホームケア、ペットケア、アルコール飲料業界で指数が高くなっており、これらの製品を購入するにあたり、日本の消費者は、実店舗でもオンラインでも同じブランドを選択している可能性が高く、企業側も、これら業界の主要企業がEコマースにも注力し、オフライン、オンラインの双方での成長を実現させているということがわかります。逆に、日本でデジタル支配力指数の低い主食類・その他加工食品業界においては、業界の主要企業のEコマース売上が伸びず、あるいはEコマース参入が進んでおらず、オンラインでしか買えないブランドや、Eコマースに力を入れているブランドが存在感を高めていることがわかります。

*デジタル支配力指数:実店舗及びEコマースを合算した全体市場とEコマースに限定したときの市場のそれぞれで売上高の多いトップ10の企業を比較したとき、両方においてトップ10入りしている企業数を業界ごとにまとめたもの。数値が高いほど、その産業では全体市場とEコマース市場で競合環境が似ていて、数値が低いほど、Eコマース特有の競合環境があり、オンラインでしか買えないブランドや商品、ニッチな新興ブランド、海外ブランドなどのプレゼンスが高いことを示す。

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木村は、企業へのアドバイスとして、以下のとおり述べています:

「産業により濃淡はあるものの、今後も3か国におけるEコマース比率は上昇していくと考えられる。 Eコマース市場における事業戦略を考えるときは、デジタル支配力指数、すなわち、Eコマース市場が、実店舗販売を加えた全体市場と似ているのか、それともEコマース特有の競合環境なのかを考慮する必要がある。

デジタル支配力指数が高い産業では、主要企業にとっては、今後も新興ブランドが上位に入り込んでこないよう、「守り」や「現状維持」のための戦略が有効であり、新興ブランドにとっては、この状況を打破するため、SNSやEコマースプラットフォームとのパートナーシップなどをうまく活用し、消費者に注目されるようなユニークなアプローチを考えていくことが重要。

他方、デジタル支配力指数の低い産業では、全体市場の主要企業にとっては、どのようなブランドがEコマース市場で成長しているのか、小さなプレーヤーまで追って戦略を考え、成長するEコマース市場においても強いプレゼンスを獲得する必要がある。新興ブランドにとって、このような競合環境はチャンスであり、成長を続けるEコマースチャネルでの成功は将来全体市場においてもプレゼンスを高めることにつながる。」

 

「お~いお茶」ラベルレス商品のEコマース戦略成功例

2022年から2023年にかけて、日本でEコマース成長率が最も高かったのは、ソフトドリンク業界(7%)でした。そのリーディングプレイヤーである伊藤園は、Eコマースのみで購入可能な「お~いお茶」ブランドのラベルレス商品を2023年第三四半期に売り出しました。飲食店提供分を除いたRTD茶の国内小売市場全体が数量ベースで前年比マイナス4.0%、金額ベースで1.1%成長と低調な中、「お~いお茶」の2023年のEコマース販売は金額ベースで前年比50%の売上増に成功しました。ラベルレス商品の成功には、年々高まる日本の消費者のサステイナビリティ意識が背景にあるとも考えられます。

 

より詳しいデータや事例をお探しの方は、Unlocking E-Commerce in Asia and Beyond: Lessons from China, Japan and South Koreaをご覧いただくか、弊社までお問い合わせください。

- 以上 –

報道関係の方のお問い合わせ先: 
ユーロモニターインターナショナル 広報担当
花﨑 真夕(はなざき まゆ)
Tel: 03-3436-2100  
mayu.hanazaki@euromonitor.com

ユーロモニターインターナショナルについて:
ユーロモニターインターナショナルは、英国ロンドンに本社を置くグローバル市場調査会社です。世界16か国にオフィス、100か国に現地アナリストを配置し、市場分析レポートやデータベース、カスタマイズ化されたコンサルティング調査をもって、企業の皆様の、いつ、どこで、どのようにビジネスを成長させるべきかという意思決定のお手伝いをしています。戦術的(Tactical)かつ戦略的(Strategic)である当社の調査ソリューションは、最新のデータ分析技術を利用、都市圏単位からグローバル市場までをカバーし、世界市場の様々なトレンド・成長要因に関する情報を提供することで、事業における優先順位の見極めや仮説の見直し、潜在的なビジネス機会の発見にお役立ていただけます。

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